
2019年7月、私は上海に友人に会いに行く次いでに、”善意”で中国の警察に「調査協力」に行きました。
と思っていましたが、私が思っている以上にことは重大。
しかし、私はバカなので警察を去る頃には「記事にしよっと」なんていうことを考えていたんですね…
この狐につままれたような感覚を忘れないうちに書き下ろします。
銀行で話を聞いた感じでも、今回の一件は詐欺で間違いなさそうなので公開します。
こんな電話には要注意
- 中国の領事館や警察から個人に直接連絡が来ることはありません
- 中国の領事館や警察がwechatやQQを聞いてくることはありません
- 「誰にも言ってはいけない」はやはり詐欺師
- 外国人の口座開設は本人だけができます
- パスポートの情報だけでは外国人は口座開設できません
【補足】
このページをご覧頂いている方々向けにこのページのアクセス数を開示致します。弊サイトドメインパワーの変化も多少はあるかもしれませんが、検索数が増えています。
他にも困っておられる人はたくさんいらっしゃるので、安心して電話を無視して下さい。

事の始まりは4~5月にわたる複数回の電話

通知不可能という着信がくるように
「通知不可能」と表示される電話番号から何度も電話がかかってくるようになっていました。
この「通知不可能」の着信は、そのときに出なければ、こちらからかけ返すことは不可能です。
初めてかかってきたときは「非通知??ではないのか。まあいいや」なんて思いながら無視をしていました。
毎日ではないですが、何度かかかってくるようになるうちに
「対応しないといけない電話なのかな?」と思うようになり、
ここで初めて「通知不可能」について調べました。
「通知不可能」は海外からの電話です。
ちょうどGWはマレーシアへ旅行に行ったこともあり、電話がかかってきたことをあまり不自然に感じていませんでした。
あるわけがないのに「ホテルかな?」なんて思いつつ、『次かかってきたら出よう』という気になっていました。
初めて電話を取ったとき、よくあるオペレーションの電話でした。
「中国大使館がなんたらかんたら…」
あとは話すのが速すぎてなんの電話だったのかわからないまま、あっという間に終わってしまいました。
でも、とりあえず「中国大使館???」
そんなこと言われたら出ないといけない気がするじゃないですか笑。
大事なことだから何回もかけてくるのかな?と。
何日か経って次に電話に出たとき
何を言っているのか明確にはわからないまま、とりあえず「2」を押すと電話が繋がりました。
ここから先は会話形式でお楽しみください・・・(吹き出しの設定が不十分で見にくいかと思います、すみません)
あなた、パスポートの情報が漏れてますよ

大使館「上海の〇〇銀行で△△△という女性が、君のパスポートを使って☓☓☓万元出し入れしているんだよ、君はこのことを知っているかい?」
私「知りません。」
最初は話を飲み込むのに時間がかかりました。日本人の稚拙な中国語にも優しく、わかるように何度も話をしてくれるんです。
大使館「君のパスポート情報が漏れていて、マネーロンダリングに使用されている可能性が高いです」
私「えぇ…。そんなこと言ったって。それで僕はどうすればいいんですか」
近々日本から中国へ行く予定があることを伝えると、
大使館「今のままだと入国できないよ」
私「行けない?それは困るよ!」
大使館「『证明单』を公安(警察)に作ってもらってね」
もう言われるがまま…。
私「どうしたらいいの?」
大使館「今話した内容を公安に電話して、事情を話してみたら聞いてくれるから」
私「そんなのなんて説明したらいいんですか」
大使館「さっき言ったことをもう一度いうからメモして復唱して」
私「中国大使館から公安に電話するように言われました。日本人の〇〇といいます。上海で△△△という女性が、私のパスポートを使って〇〇銀行で口座を開いて☓☓☓万元出し入れしているのがわかって、個人情報が漏れている可能性があるそうです。今のままだと中国に行けないから、证明单を私に作ってください。」
こんな感じのことを言い終えると、公安の電話番号が書いてある上海公安のウェブサイトを見るよう案内されました。
大使館「1番下の方に電話番号があるからそこにかけて下さい。この案件の番号は〇〇〇〇だから、そう伝えたら向こうもわかるし対応してくれるから」
私「はい、わかりました。終わったあと证明单を私はどうやってもらえるんですか?」
大使館「公安が大使館に直接くれるから、そこは心配しなくていいよ。」
“公安”に事の重大さを諭され、怒られる

偽の電話番号とも知らずにかける私。
先程”大使館”なる人に言われた通りに話すと、電話をとった男性は「大使館から?」となにもわからないような素振りをしていました。
先程の案件番号を伝えると、しばらく電話を切らずに待っておくよう指示されました。
ニセ公安「えらいことになったなあ。これは大変な事件だぞ?本当にお前じゃないのか?」
私「知りません。してないです。その〇〇銀行の口座も持ってないし、△△△なんて知り合いじゃないし、☓☓☓万元なんて大金持ってないよ!最後に中国行ったの5年前だよ!」
なんの演出か知りませんが、今どこにいて周りに誰かいるのか確認した上で、
ニセ公安「今から事実確認をするために、公安本部と連絡を取る。君も聞くべきだから、電話はつなげたままにしておきなさい」
すると、電話が始まり
ニセ公安「こちら総本部、こちら総本部…(ザラザラ…)」
といった感じで、無線でやり取りしているかのようなザラザラした音質で事情を説明。
私はもう”公安”の世界に引き込まれています。
本部とのやり取りが終わると、また今どこにいて周りに誰かいるのか確認してきました。
一人で自分の部屋にいることを伝えると、wechatとQQは持ってるか?と聞いてきました。
私「wechatはあるよ。QQは持ってない。なんで?」
ニセ公安「書類を送るのと、動画で電話をする必要がある。すべて記録として残すけど協力してくれるかな?」
私「いいよ」
このとき、スマホで電話をしながら同時に他の操作することができず、時間がかかりました。
もうすぐお昼になっちゃうよ…なんのための休暇やねん…なんて思いながら。
スマホもかなり熱くなっており、スムーズに動作が進みませんでしたが、”公安”は黙って待ってくれました。
私「お待たせしてすいません、やっとインストールできました。」
ニセ公安「連絡先に〇〇を追加して」
私「したよ」
そして送られてきたのがなんともヤバそうな書類。これを見て私はかなり深刻な事態になっているんだなと思う一方、「なんだこれ、すごい経験してるな」なんて呑気なことも考えていました。
書類に書いてあるのは確かに僕のパスポート番号と僕の写真。明らかにやばいです。

ニセ公安「この件は他の誰にも言ってはいけない。誰かに調査していることが知られると調査に支障を来たす。」
私「わかった」
すでに「自分しか知らない事件」みたいな発想になっていたので、今思えば救いようがない状態でしたね。
動画通話で検察官が銀行の情報を聞き出してくる
次に出てきたのは検察官。
“検察官”は仕事柄なのかやたら厳しく接してきました。
検察官「お前が〇〇か?この書類に書いてあることがわかるか?お前自分がやったこと分かってんのか?マネーロンダリングは中国では大罪だぞ」
私「知らないよ。やってないよ。〇〇銀行の口座なんてそもそも作ってないし、△△△なんて女も知らないよ」
検察官「△△△っていう女はお金に困っているお前が、お金のためにパスポートの情報を△△△に売ったなんて言ってるぞ。」
私「知らないってば」
私は何も関与していないことを主張し続けると、検察官は話を改め、それではこの事件の調査に協力してくれと言い出してきました。
私「協力?まあいいよ」
検察官「今周りには誰もいないか?今から動画で確認しながら話をしなさい」
ということでテレビ電話を始めました。
検察官「本当にお前は▲▲銀行のを持ってないんだな」
私「持ってない。中国の銀行なら、●●銀行と■■銀行だけだよ。あとは全部日本の」
検察官「ならそれをちょっと見せてみろ」
私「はい、コレが●●銀行で、コレが■■銀行」
1枚1枚持ってるカードを見せます。バカですね。
検察官「これはなんで持ってるんだ?」
私「昔留学してたときに作ったんだよ」
検察官「じゃあ日本の銀行はどこのを持ってるんだ。すべて見せなさい」
私「コレと、コレと、コレだよ。」
そう言いながら通帳の表紙を見せます。
※当然、本当に全部は見せてません。流石にこのときはだるくなっていました。とはいえ彼らを1ミリも疑っていなかったのは事実です。
そうやって銀行口座の情報をいともやすやすと教えてしまった自分が笑えますね。ただのバカ。
それから「中国にはいつ来るんだ?上海の公安にいつでもいいから来てくれ。」というふうに言われ、
私「いいよ。多分すぐにはいけないけど」
以上が6月初旬の話です。

7月下旬、上海の公安を尋ねる
“公安”との約束を忘れていない私は、上海の友人などに会いにいく合間に上海の公安に立ち寄りました。そこは刑偵ではなく出入国管理をする分局でしたが、カウンターにいた女性は対応してくれました。
最初は「なんやねんこいつだるいな」と感じてるんだろうな?というのが伝わってきましたが、だんだんちゃんと事情を聞いてくれるようになりました。
“誰にも言ってはいけない機密事案”なので、あたかも自分が重要人物であるかのように意識して、ちょっと格好つけていました。
私「すみません、ちょっとこれを見てくれませんか。」
6月頭に”公安”からもらった例の書類のスクショとパスポートを見せると、当然「なにこれ?」という反応を見せてきます。
上海の公安「ここに何しに来たの?」
私「6月頭に電話で公安に来るように言われたので来ました。どこに行けばいいかわからなかったんです」
私は事情を話します。
上海の公安「6月頭に、公安と大使館からあなたに直接連絡があったの?それで、公安に来るのはいつでもいいって?それもwechatとQQで?」
私「はい」
上海の公安「ありえないから!」
私「え?どういうこと?」
上海の公安「公安や大使館があなた個人に電話を直接かけることも、公安がQQで連絡取ることも、いつ来てもいいなんてこともありえないから!詐欺だよ詐欺。そのかかってきた電話番号を見せてくれない?」
(…そんなバカな…)
言われた通りにスマホを見てみると、1ヶ月前の通話履歴は見れなくなっていました。QQもwechatも当時もらったアカウントが消えているのに、そこで初めて気が付きました。
私「あれ…”公安”のアカウントがない…」
上海の公安「向こうがアカウントを消したからあなたのとこから消えてるの。だから詐欺だって」
私「でも上海公安のウェブサイトから電話したんだよ⁉」
上海の公安「偽サイトなんかカンタンに作れるの、よくある話よ。あと、その“誰にも言ってはいけない”というのも詐欺師の常套句だから」
言われてみればこの女性の言うことは確かにその通りなのは理解しました。
経験がないとはいえ、
直接電話がかかってくること自体おかしいこと。SNSでやり取りすること。来るのがいつでもいい訳が無いこと。連絡先が消えていることがおかしいことには冷静に気付くべきだったのです。
「しかも、どこに来てって言われなかったというのもおかしい。どこでもいいわけがない。もっと詳細に書いてあるはず。こうやって検索したらこんなに検索結果が出てくるんだから、どれかじゃないといけないのよ。その連絡をとった人のところね」
確かに、としか言えなかった私は最早途方に暮れていました。
上海の公安「その電話のあと、連絡とったの?」
私「そういえば来てない」
上海の公安「ああ、もう…」
私「どうしよう!銀行の名前と口座番号教えちゃったよ。」
上海の公安「パスワードは?」
私「それは教えてない」
上海の公安「そうなの、じゃあまだましよ。それにしても馬鹿なことしたわねあんた。」
(あああああああああ!!!)
私「だってこんな経験したことないもん!!怖いよこれ、どうしよう」
上海の公安「みんなないわよ。まだ何も起きてないんでしょう?まだあんたはいい方よ。もっとひどいのあるから。何かが起こる前に日本の銀行に電話して、口座番号やら変えてもらうことね」
私「うん、わかった。ありがとう。パスポートも変えたほうがいいよね?」
上海の公安「そうだけど、銀行が先ね」
最後の方はもう笑うしかなかったですね。
幸い、私はこの年齢でお金をすべて貯めるのはよくないと考えている人だったので、どの口座にも貯金なんてものはありませんでした。なんならローンを返済するのに奮闘中なくらいですから。
あの公安の人たちが間違っていたらどうしよう
- 今でも、本当に騙されてるのかなあ?
- あの公安の人たちが間違ってたら?
と半分は思っていました。
だいたいのネットバンキングは店番と口座番号、パスワードがあればログイン可能ですからね。そう考えれば、4桁のログインパスワードなんて楽勝そうだしかなり不安です。
- 私が中国人と話せるのを知ってて電話してきたの?
- 警察の偽ウェブサイトがそんな簡単に作れるの?
- 私の銀行情報を得るためにこんな凝った演出をするの?
といろいろな疑問がなかなか払拭されず気持ち悪かったです。
今でも「誰にも言ってはいけない」と言われたのに書いていいのかなとちょっと思っています。
この件が本当だろうと嘘だろうと、どのみち、パスポートの情報がどこかから漏れていて、電話番号も出回っているのは確かなので、自分から教えた銀行口座も近々変更しなければならないです。
【後日】某銀行へ向かう
確信を得るためには第三者に聞くのが一番
ということで、問題の某銀行を訪問しました。ロビーの発券機の横に立っているお姉さんに話をしてみると、窓口に導かれることなくもあっけなく終了。
上海の公安にしろ、銀行にしろ、申し訳ない表現ですが「相手にされない」です。
パスポートをみせて口座が本当に作られているのかどうかデータを調べてほしかったのですが、案内はしてもらわずに済ませました。
「ふう、やっと安心できた…」
お姉さんの話を要約するとこうです。
- 外国人の場合、パスポートだけでカードは発行できない。
- カード発行・口座開設は本人でなければならない。
以上のような理由により、たとえ誰かが外国人のパスポート情報を入手したところで口座開設をすることは不可能ということなのです。
中国人なら可能性がなくもないので調べた方がいいかもしれないという話でした。 もうこれ以上疑っても収集つかない気がするので解決できたことにします。
万が一、上海で対応してくれた警察官の方々や某銀行のスタッフさんが間違っていたとしたら私も多少困ることがあるかもしれません。
が、少なくとも正常な人間であればこれは「詐欺」だと相手にしてくれないでしょう。
海外からの身に覚えのない電話には出ないようにしましょう。
